なぜ発音記号について学ばなければならないのか
きちんと習うことのない発音記号
皆さんが普段よく使う英和辞典、単語の隣に必ず書いてある発音記号。
あの発音記号は多くの場合、International Phonetic Alphabet(IPA)と呼ばれるものです。
長年英語を勉強していると、だんだんと馴染みが出てきて、なんとなく読めるという人もいるかもしれません。
ただ、実際にきちんとIPAについて学習したという人は少ないと思います。
僕自身も、中学、高校ではきちんと習うことはありませんでした。
その後、ニューヨークの演劇学校に留学中、留学生向けの発音矯正クラスで、初めてきちんと発音記号(IPA)について学び、自分の発音をネイティブスピーカーに近づけるために、IPAを学ぶことがとても大切であるということに気付きました。
例えば、日本語の母音には、「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の5つしかありませんが、英語にはこの倍以上の母音が存在して、日々当たり前に使い分けられています。
発音記号についてきちんと習っていないというのは、日本語でいうと、漢字の上にふってある『フリガナ』が読めないことと同じです。
言い換えると、発音記号が読めるようになれば、どんな長い難しい単語であっても、正しく発音できるようになるということです。
自分の発音に自信がなくて、英語を喋るのを躊躇してしまう。
英語の発音の理論を知り、自分の発音を向上させたい。
"apple"の最初の音を、日本語の「ア」だと思っている。
そういった方にはぜひこの記事を読んで頂きたいです。
この記事を通して、英語の発音に関する皆さんの悩みが、少しでも解消されることとなれば、嬉しい限りです。
目次
発音記号(International Phonetic Alphabet)を学ぼう!
International Phonetic Alphabet (IPA)とは何か?
IPAとは、簡単に言うと、世界のあらゆる言語で発せられる音を、視覚的に認識できるよう文字化したもの。
ちょっと難しいですね。。具体例で見てみましょう。
英語の"apple"
これをIPAで表記すると
[æpl]
となります。
これによると、英語の”apple”という単語は、
[æ]と[p]と[l]という3つの音で成り立っていることが分かります。
そして、それぞれの音を発するために必要な唇や舌の動きもIPAは説明しています。
例えば
[æ]の音:唇は開き(口の形が丸くならないように)、舌は口の中の最も低い位置で平らにしておく。
[p]の音:唇を完全に閉じた状態から、素早く開き、少量の息をリリースする。声帯は振動させない。
[l]の音:舌先を上歯茎につけ、緊張させた状態で、舌の両端、口角を通して息を送り出す。
*Barron's 社『Mastering The American Accent』 Lisa Mojsin著より
ぜひこのインストラクションにしたがって、ひとつひとつの音を発音してみてください。
そして慣れてきたら、繋げて"apple"と言ってみて下さい。
どうでしょう。
これは、あくまで1つの例。
たった3つの音に過ぎませんが、「お、何か、普段の発音と違うな」と感じられたり、皆さんの英語の発音に対する理解が深まったのであれば、IPAを学習してみる価値があるのではないでしょうか。
IPAを学ぶメリット
視覚的、論理的に英語の発音を学習することができる。
もちろんネイティブの実際の音を聴いて学習をすることも大切ですし、必要不可欠です。
ただ、その音が実際にどうやって発音されているのかを学ぶことで、その音を自分でも再現できるようになります。
IPAは、音楽で例えるなら楽譜のようなものです。音楽を耳で聴いただけで、すぐピアノで弾けてしまう人もいますが、そういう人はごく少数ですよね。
そうでない人のために、楽譜があります。
音を記述することで、視覚的に捉えることができるようにし、誰もが再現できるようにした。
それがIPAの素晴らしさではないでしょうか。
IPAを効果的に活用した英語の学習方法
ここで紹介する学習方法は、英語で使われるそれぞれの音(母音・子音)の発音方法を、ひと通り学んでいることが前提になっています。
もし英語の母音・子音の発音方法(唇や舌の位置、動かし方)が分からないという人は、それらを説明している参考書などでぜひ勉強してみてください。ちなみに僕のオススメは洋書ですが、Barron's 社『Mastering The American Accent』 Lisa Mojsin著です。
1 単語を調べる時に、IPAも必ずチェック!まずは自分で発音!
学習方法
知らない単語を調べる際に、その横に書いてあるIPAを見て、まずは自分なりに発音してみましょう。
その後で、音声を聴いて、ネイティブの音と自分の音を比較します。
1度ネイティブの音声を聴いたら、その音に近づけるように、何度か発音します。
聴く→発音→聴く→発音を繰り返します。
学習効果
発音がネイティブに近づく!
IPAで学んだ方法で自分なりに出した音を、ネイティブの音と比較することで、発音がネイティブに近づいていきます。
学習速度、定着度が向上!
ただ音を聴いて真似るだけでなく、実際に唇や舌をどう動かして発音するかという知識があるため、学習速度が早まり、また定着度も高まります。
2 英文をIPAで書き直してみよう!
学習方法
あなたが勉強しているテキスト、好きな本、洋楽の歌詞など何でも構いませんので、それらの中から、1文選び、それをノートに書き出しましょう。
書き出したら、その英文の下に、それぞれの単語をIPAで書き直していきます。
書き直したら、その英文をIPAを見ながら5回、英文を見ながら5回、音読します。
例) I hear what you're saying.
IPA) ɑɪ hɪər wɑt yʊər seɪɪŋ
最初はゆっくり、1つ1つの発音を確認しながら読んでみましょう。5回と言わず、できるだけたくさん音読することをお薦めします。
もし可能であれば、以上のやり方で練習した文を、英語の先生やネイティブに聴いてもらいましょう。
ネイティブの人に実際に読んでもらい、それを録音して、聴きながら再度練習すると、学習効果が倍増します!
*ネイティブスピーカーが身の回りにいないという人は、Camblyなどのオンライン英会話に登録して、そこでフィードバックをもらうというやり方も良いでしょう。
学習効果
実際の英文で練習することにより、より実戦に近い形で、発音を学ぶことができる!
単語単体では正しく発音できたとしても、文の中で、実際に使う時に発音できるようになるためには、文章のまとまりで練習することが必要です。
また、文内の単語どうしの連結などにより、変化する発音についても学ぶことができます。
まとめ
IPAとは:いろいろな言語で使われる音を、視覚的に認識できるよう文字化したもの
IPAを学ぶメリット:音を視覚的に捉え、その音をどうやって再現すれば良いかということが、具体的に分かるようになる。
IPAを使った英語の効果的学習法:
1 単語を調べる際は必ず、IPAを見て、まず自分で発音してみる。
2 英文をIPAで書き直し、それを見ながら何度も音読する。